「大きなのっぽの古時計」も、直せばまた動く
歌手・平井堅さんもカバーした名曲『大きな古時計』では100年間動いていた大きな古時計が、おじいさんの死とともに止まったことを歌っています。
これはアメリカの古い歌『My Grandfather’s Clock』の一節で、「90年間動いていた大きな古時計が、おじいさんの死んだ朝に止まった――」。を日本語訳では「100年休まずに動いた」とされています。
情感あふれるこのエピソードですが、時計を扱う専門家の目線からは、どうしてもこう言いたくなります。
「ちゃんとメンテナンスしていれば、まだ動いていたかもしれません」
機械式時計は、正しく整備すれば何十年、あるいは100年以上使い続けることができる再生可能な精密機械です。
このコラムでは、「一生ものの時計」に必要なメンテナンス知識を、実例を交えて解説していきます。
高級時計をメンテナンスしないと、どうなる?
ロレックスやオメガといった高級時計も、精密な歯車やゼンマイ、パッキンなどで構成された機械式です。メンテナンスを怠ると、以下のような症状が現れます:
- 時間が狂いやすくなる(油切れ、部品摩耗)
- 湿気が入り内部が曇る・サビる
- パーツの破損によって動作停止
- 最悪の場合、修理不能となることも
特に「まだ動いているから大丈夫」と放置しがちな方は要注意。内部では確実に劣化が進んでいます。
メンテナンスが必要な技術的理由
高級時計のムーブメント内部には、数百点にも及ぶ微細な部品が使用されています。これらをスムーズに動かすための潤滑油は、空気や湿度の影響で酸化し、時間とともに粘度が変化してしまいます。
また、防水性を担保するパッキン(ゴム素材)は数年で劣化。湿気が侵入しやすくなり、ダイヤルや針に腐食をもたらします。
こうした症状は、定期的なオーバーホールによって未然に防ぐことができます。
「壊れてから直す」ではなく、「壊れる前に整える」のが、長く使い続けるための基本姿勢です。
「一生もの」の時計とは何か?
高級腕時計はただの道具ではありません。そこには文化的な耐久性と哲学が宿っています。
- パテック フィリップは、自社の時計を「所有するものではなく、次の世代まで預かっているもの」と表現します。
- IWCの永久カレンダー搭載モデルは、2099年以降の「西暦表示パーツ交換」を約束し、次世代以降の使用を前提としています。
- オメガの「コーアクシャル」機構は、摩耗を最小限に抑え、保証期間を最長5年に延長しています。
こうした“造り手”の意思に応えるために、使い手である私たちにも日常の気遣いやメンテナンスの責任があるのです。
事例で見る「メンテナンスを怠った代償」
ロレックス・サブマリーナの例
10年間メンテナンスせずに使用し続けた結果、突然の動作停止。内部を開けてみると、油は乾ききり、複数の歯車やゼンマイが摩耗。修理費用は通常の2倍以上に膨れ上がりました。
オメガ・シーマスターの例
曇りを放置し続けたことで、湿気が入り込みダイヤルが腐食。文字盤と針を全交換する事態に。市場価値は通常の60%以下まで下落しました。
高級時計を資産価値ごと守るために ― プロによる定期メンテナンスを
高級時計は精密な機構で作られており、見た目には問題がなくても、内部の潤滑油の劣化や部品の摩耗によってトラブルが進行することがあります。定期的なメンテナンスを行うことで、思わぬ故障を防ぎ、大切な時計を長く安心して使い続けることができます。
私たちは1930年の創業以来、年間10万本以上の修理実績を持ち、百貨店や時計店、大手量販店の修理コーナーでも高く評価されています。豊富な経験と確かな技術で、お客様の時計を最適な状態に保つことをお約束します。
さらに新サービス『時計のライフプランナー』では、お客様一人ひとりに合わせた修理プランをご提案。
- 最適な修理内容のご提案
- 必要に応じたメンテナンスオプション
- 明瞭な料金と安心のアフターサービス
時計を長く愛用するために、ぜひ私たちのプロフェッショナルなオーバーホールをご検討ください。
次回予告:時計の“天敵”は水と磁気。日々できるケアとは?
次回の第2回では、時計の寿命を縮める水・磁気・汗などの外的要因や、
プロが推奨するケア方法・拭き取りの基本、オーバーホールの本質、そして五十君商店の技術的なこだわりについて詳しくご紹介します。