高級時計の“天敵”は水と磁気
どんなに高精度な時計でも、避けて通れないのが「外的ダメージ」です。なかでも寿命を縮める大敵が、「水」と「磁気」です。
水分の侵入:見えないダメージの入り口
時計に水が入ると、内部の潤滑油が乳化し、パーツがサビてしまいます。とくに以下の5箇所は浸水リスクが高いとされています。
- ガラス(風防)
- 裏蓋(ケースバック)
- ケース本体のつなぎ目
- リューズ(ねじ込み式でも開閉状態に注意)
- プッシュボタン(クロノグラフなど)
「100m防水」と書かれていても、ゴム製のパッキンは経年劣化します。シャワーやプールでの使用前には必ず防水性能を点検しましょう。
磁気:知らぬ間に狂いを生む見えない敵
スマートフォン、スピーカー、電子レンジ、電動工具――。私たちの身の回りには磁気を発する機器があふれています。強い磁気に触れた時計は、ヒゲゼンマイなどの部品が帯磁し、一気に数時間ズレることすらあります。
もし狂いが顕著になったら、無理に合わせる前に「消磁(デマグ)」を。五十君商店のような修理専門店では、専用機器による消磁処置を迅速に行えます。
時計の寿命は“使い方”と“習慣”で決まる
日常のケアは「拭くこと」から
高級時計の手入れで最も基本的で効果的な方法、それが「拭くこと」です。汗や皮脂、空気中の汚れはステンレスでも腐食の原因になります。使用後は柔らかいクロスで丁寧に拭き取りましょう。
とくにおすすめなのが、時計専用の「セルベット」。五十君商店ではスタッフ全員がセルベットを使用し、修理完了品を一点一点丁寧に仕上げています。
傷のケア:プロに任せるのが最善
小さなキズは金属用コンパウンドで目立たなくできますが、鏡面仕上げ(ポリッシュ面)とヘアライン仕上げ(マット面)ではケア方法が異なります。間違えると元に戻らないため、外装研磨はプロに任せるのが安心です。
オーバーホールは“延命”ではなく“再生”
オーバーホールとは、時計を分解・洗浄・注油し、消耗パーツを交換して再組立するメンテナンス工程のことです。あくまで「壊れたから修理する」のではなく、「壊れないように整える」ための予防整備です。
オーバーホール推奨サイクルとして言われているのは、機械式時計でおおよそ3〜5年。とはいえ使い方や保管状況によって適正な時期は変わるため、専門家の診断を受けたうえで判断するのが賢明です。
五十君商店のこだわり 〜 時計の“ライフプランナー”として
時計を長く使用するためには定期的なメンテナンスが必要です。
メンテナンス技術は当然のこと、何を行うかが重要ですが、修理店、有名ブランドの多くは修理内容が定型化されています。時計を修理に出したら中の部品が変えられているというケースも珍しくありません。
私たち五十君商店は、画一的な作業ではなく、1本1本の時計と真剣に向き合うことを信条にしています。
- 修理技術者が、お客様ごとのご要望に応じた見積もりを作成
- 時計の状態に応じた追加メンテナンス提案も実施
- 可能な限り時計の中にあるオリジナルの部品を磨きなどメンテナンスを施し、時計を最適な状態にいたします
- 世界各国の正規代理店と直接取引し、純正部品や専用工具をスピーディーに調達できますので、オリジナルの部品の再生が難しい際にもご安心いただけます。
- 国内最大級の修理実績とノウハウ、最新の設備を備えた自社修理センターを備えています
これは弊社が単なる「修理屋」ではなく、時計のライフプランナーとして、あなたの大切な1本と、これからの時間を一緒に歩み続けたい、その思いがあるからです。
終わりに:一生ものの時計を、本当に“一生もの”にするために
いい時計には、直せる設計があります。
けれど、それを活かせるかどうかはその時計のオーナー様の姿勢次第です。
世代を超えて受け継がれる時計は、適切なメンテナンスの積み重ねによって実現します。
あなたの大切な時計も、ぜひ一度ご相談いただければ幸いです。
参考文献:『腕時計のこだわり』並木浩一 ソフトバンク新書