はじめに

古い時計について調べていると、
「この年代の時計はこういうもの」
「もう古いから仕方がない」
といった説明を目にすることがあります。
しかし、修理の現場で実際に時計と向き合っていると、
そうした一般論が当てはまらないケースが数多くあります。
本記事では、
なぜ古い時計ほど一般論が通じなくなるのか
という点について、
五十君商店の修理現場の視点から解説します。
時計は「作られたあと」に別の歴史を生きていく
時計は、工場を出た瞬間から同じ状態であり続けるわけではありません。
どのように使われてきたか
どのような環境で保管されてきたか
そして、どのようなメンテナンスや修理を受けてきたか。
これらの積み重ねによって、
同じ年に作られた時計であっても、
内部の状態は少しずつ、しかし確実に変わっていきます。
古い時計ほど、
設計や年代そのものよりも、
その後に何が行われてきたか
の影響が大きくなります。
過去の修理が、現在の状態を作っている
再生と調整が中心だった時代の修理
1960年代から70年代にかけて、
時計修理の現場では、部品交換よりも
再生や調整が中心でした。
摩耗した軸を削って使う
穴を潰して開け直す
姿勢を見ながらバランスを取る。
これらは当時としては最善の判断であり、
時計を使い続けるための現実的な方法でした。
しかし、
どこまで削るのか
どこまで追い込むのか
どの段階で止めるのか
という判断は、修理を行った人の技術力や考え方に大きく委ねられていました。
同じ時計でも状態が大きく異なる理由
その結果、
同じモデル、同じ年代の時計であっても、
・丁寧に整えられてきた個体
・無理な調整を繰り返されてきた個体
では、現在の状態がまったく異なることがあります。
古い時計ほど、
「どのように直されてきたか」が
状態を大きく左右します。
技術水準の違いは、時計にそのまま残る
過去の修理は、
常に現在と同じ技術水準で行われてきたわけではありません。
当時は最善だった方法が、
現在の基準では耐久性に影響しているケースもあります。
一方で、
高度な技術で丁寧に整えられてきた時計が、
何十年経っても安定した状態を保っていることもあります。
古い時計ほど、
「どの時代に、どのような考え方で修理を受けてきたか」
が、状態判断に大きく影響します。
「動いている」という事実だけでは判断できない
古い時計の相談でよくあるのが、
「今は動いているから問題ないと思う」
という考え方です。
しかし、修理の現場では、
摩耗や歪みを抱えたままでも、
一定期間は動き続けている時計を数多く見てきました。
動作と内部状態は一致しない
軸がわずかに振れている
部品が歪んでいる
姿勢によって精度が大きく変わる。
こうした状態でも、
時計は動いてしまうことがあります。
古い時計ほど、
動いているという事実だけで
状態を判断することは難しくなっていきます。
モデル紹介 1950〜60年代 IWC 手巻きモデル Cal.89 系
1950〜60年代に製造された IWC の手巻きモデルは、
実用性と耐久性を重視した設計で知られています。
中でも Cal.89 系ムーブメントは、
長期間にわたって生産され、
多くの個体が日常で使われ続けてきました。
生産期間の長さが生む個体差
生産期間が長いからこそ、
過去にどのような修理を受けてきたかによって、
内部の状態に大きな差が生まれやすいモデルでもあります。
同じ IWC の手巻き時計であっても、
・軸や穴の処理方法
・調整の追い込み方
・修理が行われた時代の技術水準
によって、現在の状態はまったく異なります。
このモデルが示しているのは、
古い時計ほど、
一本一本を見て判断する必要があるという事実です。
五十君商店が考える、古い時計との向き合い方
五十君商店では、
古い時計だからといって一律に判断することはありません。
大切にしているのは、
その時計がどのような修理や判断の積み重ねを経て、
現在の状態に至っているのかを
ひとつずつ確認することです。
過去の修理がどの時代の技術で行われたのか、
どのような考え方で整えられてきたのか。
それらを尊重したうえで、
これから無理なく使い続けられるかどうかを判断します。
古い時計ほど、
まず状態を確認するという姿勢が欠かせないと考えています。
まとめ
古い時計ほど、
年数やブランドといった一般論では
状態を判断できなくなります。
理由は、
時計が辿ってきた修理の履歴と、
その時代の技術水準が、
現在の状態に強く影響しているからです。
大切なのは、
一般論で結論を出すことではなく、
その時計の状態を実際に確認すること。
それが、
古い時計と長く付き合っていくための
第一歩になります。
修理のご相談について
宅配修理・来店予約のご案内
古い時計ほど、
年数やブランドだけで状態を判断することはできません。
五十君商店では、
その時計がどのような修理や判断の積み重ねを経てきたのかを確認したうえで、
無理のない整備方法をご提案しています。
「オーバーホールだけで良いのか」
「追加の調整や修理が必要なのか」
判断に迷われる段階でも構いません。
まずは状態を確認することが大切だと考えています。
全国対応の宅配修理サービス
五十君商店では、
全国から時計をお預かりできる宅配修理サービスをご用意しています。
お忙しい方や、
お近くに店舗がない方でも、
安心してご利用いただけます。
宅配修理の詳細はこちら
https://www.igimi.co.jp/packing-kit/
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状態を確認しながら、
時計の履歴やご希望を伺ったうえで、
今後の整備方針をご案内します。
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五十君商店では、
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オーバーホールおよび修理に対応しています。
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