2024.03.07
時計修理の用語集
アガキ修正
アガキは歯車、アンクル、テンプ等は、「地板」と「受け」という部品に取り付けられた「穴石」(人口ルビーが主流)に軸の先端(ホゾ)を通した状態で挟まれて固定されます。
その際、スムーズに回転させるためには、若干の余裕が必要となります。
歯車の上下(地板と受けとの隙間)の余裕を「立てアガキ」、ホゾと穴石の穴との余裕を「横アガキ」と呼びます。
標準的な時計では、この隙間量100分の2mm~100分の5mm程度になります。大きすぎても、小さすぎても不具合の原因となります。
また、アンティークやヴィンテージ時計では、「穴石」が使用されておらず、「地板」「受け」に直接ホゾを通すものもあり、より高度な修理技術が必要となります。
修理方法
- 穴石交換
- 穴詰め直し
- 穴石位置調整(ホリアツール)
アンクル爪石調整
アンクルは、歯車の回転運動を往復運動に変換しテンプに伝える需要な部品になります。
また、テンプの往復運動を受け止め、一定の速度で規則正しく歯車を回転させます。
そのアンクルに取り付けられている、ガンギ車の力を受け止める部品が爪石(入爪、出爪)になります。
ガンギ車との噛み合いの深さ、入爪、出爪のバランスが崩れることのより、伝達ロス、動作不良、止まりなど様々な不具合が発生します。
修理方法
- 第一停止調整
- 第二停止調整
- 振動の中心合わせ(エアリーの定理)
- 剣先アガキ調整
- 箱先アガキ調整
裏押え交換(新規)
裏押えとは、主にリューズを引き抜く時にオシドリを正しい位置で止めるためのパーツで、破損しやすい部分です。
リューズの近くに位置するため、外部の影響を受けやすい点も破損しやすい理由のひとつと考えられています。
オシドリ交換
オシドリ交換とは、時計の竜頭を固定するパーツを交換することです。
交換するタイミング
- 竜頭が緩んだり、抜けたりしたとき
- 竜頭の防水性能が低下したとき
- 竜頭のデザインを変えたいとき
オシドリ交換の手順
- 時計のケースを開ける
- 竜頭を引き抜く
- オシドリを外す
- 新しいオシドリを取り付ける
- 竜頭を差し込む
- 時計のケースを閉じる
回路交換
時計修理における「回路交換」とは、時計の内部にある回路(電子基板)を交換することです。
回路は、時計の機能を制御する重要な部品であり、故障すると時計が正常に動作しなくなります。
なぜ回路交換が必要になるのか
回路交換が必要になる原因は様々です。
最も多い原因は、経年劣化によるものです。
時計は精密機器であり、使用していくうちに内部の部品が摩耗したり、劣化したりしていきます。
特に、回路は繊細な部品であり、経年劣化の影響を受けやすいです。
また、落下や衝撃などの外的なダメージによって回路が故障することもあります。
また、時計を使用する環境によっては、回路にサビや腐食が発生して故障することもあります。
切換車修正、または交換
切換車は自動巻き機構に使用される部品の1つで、両回転するローターの力を一方向に回転するように「切りかえる」特殊な歯車になります。
切換車の不具合の原因
- 経年劣化
- 油切れ、錆
- 摩耗、破損
修理方法
- アガキ調整
- 分解洗浄
- 歯先修正
クロノグラフ機構一式修正
ストップウオッチ機能付きの時計をクロノグラフと呼び、1分間で1周するストップウオッチ針のほか、30分積算計、12時間積算計などがついているものがあります。
通常の時計にくらべ、部品点数、可動部品が多くなり、また精密な歯を持つ歯車が使用されるため、多くの修正、調整が必要となります。
クロノグラフ機構一式修正が必要な場合
- ストップウォッチ機能が正しく作動しない
- ストップウォッチ機能が全く作動しない
- クロノグラフの針が正しく動かない
- クロノグラフの針が全く動かない
クロノグラフ機構一式修正の手順
- クロノグラフ機構を分解する
- クロノグラフ機構の部品を点検する
- 不具合のある部品を交換する
- クロノグラフ機構を調整する
- クロノグラフ機構を組み立てなおす
香箱一式交換
香箱とは、時計のゼンマイを収納する部品です。ゼンマイがほどけていくことで、時計の針が回転します。
香箱一式交換では、時計の香箱部分の部品をすべて交換します。
香箱一式交換が必要な場合
- ゼンマイが切れてしまった場合
- 香箱の歯車が摩耗してしまった場合
香箱一式交換の手順
- 時計を分解する
- 香箱を取り外す
- 香箱の部品を交換する
- 香箱を組み立てる
- 香箱を取り付ける
- 時計を組み立てる
香箱修正(内壁摩耗修正)
香箱は機械式時計の動力であるゼンマイが収められている箱状の歯車です。
非常に強いゼンマイの力を支え、伝えるため摩耗が多くみられます。また、ゼンマイが切れてしまった際には、その衝撃により歯が変形、破損する場合もあります。
修理方法
- 香箱真アガキ調整
- 香箱穴詰め
- 内壁摩耗修正
- 歯先変形修正
香箱修正(内壁摩耗修正)を行うタイミング
香箱修正(内壁摩耗修正)は、時計の経年劣化によって起こる自然な現象なので、定期的に行う必要があります。
周期は時計のメーカーや使用状況によって異なりますが、一般的には、3〜5年程度が目安です。
軸穴詰め
軸穴とは、歯車の軸が通る穴のことを指します。軸穴詰は、経年劣化で広がってしまった軸穴を適切な大きさに調整する作業です。
軸穴が狭くなると、歯車の軸がよりしっかりと固定され、歯車の回転が安定します。
軸穴詰めの方法
- 専用の工具で軸穴を叩いて穴を狭くする
- 専用の工具で軸穴を削って狭くする
軸穴詰めが必要な場合
・歯車の軸がガタついていて、歯車の回転が安定しない場合
・歯車の軸が摩耗していて、軸穴が大きくなってしまった場合
・時計の精度が悪い場合
ジャコツール
主に天真や歯車のほぞを磨く時に使用します。手回し旋盤とも呼ばれ、部品製作時にはかかせないツールです。
ストップレバー交換
ストップレバーとは、リューズを引き抜いた時に秒針を止める為に機能する部品です。
秒針を動かす車にレバーが掛かってその動きを止めます。
ストップレバーが破損すると、リューズを引き抜いてカレンダー調整や時刻調整をする際にも時計が動き続けてしまい、人が手で行う操作と機械式な動作に干渉が起きてしまいます。
ストップレバー交換の手順
- 時計を分解してストップレバーを取り外す
- 新しいストップレバーを取り付ける
- 時計を組み立て直す
絶縁シート交換
時計修理における絶縁シート交換とは、時計内部の電気部品を保護する絶縁シートを交換する作業のことです。
絶縁シートは、時計の故障を防ぐために重要な役割を果たしており、絶縁シートが汚損する理由のほとんどが電池の漏液によるものです。
絶縁シートに問題があっても 時計内部に湿気や汚れが侵入することはありません。
絶縁シート交換の必要性
絶縁シートは、経年劣化や損傷によって交換が必要になる場合があります。
絶縁シートが劣化すると、電気部品がショートしたり、時計の故障の原因になったりします。
ゼンマイ交換
時計はゼンマイの動きで駆動しています。
ゼンマイは長い間使っていると劣化してきて、正確に動かなくなったり、止まってしまったりすることがあります。
そのような場合に、ゼンマイを交換する必要があります。
ゼンマイ交換の修理期間は、時計の種類やゼンマイの素材によって異なりますが、一般的には1週間〜2週間程度です。
ゼンマイ交換後の注意
ゼンマイ交換後は、必ず時計をオーバーホール(分解掃除)に出しましょう。
オーバーホールは、時計の内部を分解して掃除し、必要な部品を交換する作業です。
オーバーホールを行うことで、時計の寿命を延ばすことができます。
タイミング調整(歩度調整)
時計の精度を調整することで、時間通りに正しく動作するよう調整することです。
タイミング調整(歩度調整)の手順
- 時計分解する
- 分解した部品を洗浄する
- 部品を検査して、摩耗や損傷がないか確認する
- 必要に応じて、部品を調整する
- 部品を組み立てる
- 時計を動作させて精度を確認する
タイミング調整(歩度調整)の重要性
タイミング調整(歩度調整)は、時計の精度を維持するために重要な作業です。
時計の精度が狂うと、日常生活に支障が出るだけでなく、仕事や学業にも悪影響を及ぼす可能性があります。
タイミング調整(歩度調整)の頻度
調整の頻度は、時計の種類や使用状況によって異なりますが、一般的には、1年に1回程度を目安に行うのがおすすめです。
天真の新規作成
天真はテンプ中心に取り付けられる軸で、先端のホゾは標準的な腕時計で100分の8mm程度と、髪の毛ほどの太さになります。
そのため、衝撃によって曲がったり折れることがあります。また、非常に高速で往復運動を繰り返しているため、オイルのない状態で使用を続けると摩耗が進み精度に悪影響がでます。
修理方法
- 研磨(ジャコツール)
- 新規作成
- 交換
- 天真の仕上げ
天真新規作成の必要性
天真は、時計の中で最も摩耗しやすい部品の一つです。
そのため、定期的に点検して、摩耗や変形がないかを確認することが大切です。
天真が摩耗したり、変形したりした場合は、すぐに新規作製して交換することが必要です。
天真を交換せずに放置しておくと、時計の正確性が悪くなったり、最悪の場合、時計が動かなくなったりします。
天輪片重り調整(静的、動的)
時計の天輪は、振り子の役割を果たす重要な部品です。
天輪が片重りしていると、時計の精度が低下したり、故障の原因になったりします。
天輪片重り調整は、天輪の重心を調整して片重りを解消する作業です。
静的片重り調整(静止状態での調整)
時計を静止した状態で、天輪の重心を調整します。
これは、天輪のリムに小さな重りを取り付けて行います。
重りを調整することで、天輪の重心を中心に近づけ、片重りを解消します。
動的片重り調整(動作状態での調整)
時計を動作させた状態で、天輪の重心を調整します。
これは、天輪のリムに小さな重りを取り付けて行います。重りを調整することで、天輪の重心を中心に近づけ、片重りを解消します。
動的片重り調整は、静的片重り調整よりも正確に調整することができます。
天輪修正(バランス取り直し)
天輪は時計の心臓部であり、そのバランスが狂ったり、天輪の軸受けが摩耗すると、天輪の回転がスムーズに行われなくなり、時計の精度が低下します。
時計の精度を維持するために、定期的に天輪修正を行うことが大切であり、時計修理の中でも最も重要な作業のひとつです。
天輪修正の手順
- 天輪を取り外す
- 天輪の軸受けを点検する
- 天輪の重心を測定する
- 天輪の重心を調整する
- 天輪を取り付ける
天輪修正にかかる期間は、時計の構造や状態によって異なりますが、一般的には1週間程度で完了します。
しかし、複雑な構造の時計や、状態が悪い時計の場合は、さらに時間がかかる場合があります。
特殊工具を使用した摩耗修正、磨きなおし
時計のムーブメントは、歯車やゼンマイ、テンプなどの細かい部品で構成されており、これらの部品は長年使用していると摩耗や汚れが蓄積してきます。
摩耗や汚れが蓄積すると、時計の精度が低下したり、故障の原因になったりします。
特殊工具を使用した摩耗修正、磨きなおしとは、時計のムーブメントを分解し、摩耗した部品を特殊工具を使用して修正する作業のことです。
この作業を行うことで、時計の精度を回復させたり、故障を防ぐことができます。
特殊工具を使用した摩耗修正、磨きなおしの手順
- 時計のムーブメントを分解する
- 摩耗した部品を特殊工具を使用して修正する
- ムーブメントを組み立て直す
- 時計の精度を調整する
特殊工具を使用した摩耗修正、磨きなおしのメリット
特殊工具を使用した摩耗修正、磨きなおしには、以下のようなメリットがあります。
- 時計の精度を回復させることができる
- 故障を防ぐことができる
- 時計の寿命を延ばすことができる
特殊工具を使用した摩耗修正、磨きなおしは、繊細な作業であるため、時計修理を専門とする技師に依頼することをおすすめします。
また、特殊工具を使用して摩耗修正、磨きなおしを行う際には、時計のムーブメントを傷つけないように注意する必要があります。
2・3・4番車修正
時計の歯車である2・3・4番車は、1番車の中のゼンマイの動力を伝える役割を果たしています。
この動力が正確に伝わらないと、時計の正確性が失われてしまいます。
修理の際は歯車だけでなく、軸などの歯車周辺の部品をひとつひとつ全て確認し、調整を行います。
2・3・4番車修正の手順
- 歯車とその周辺部品の摩耗を測定する
- 歯車の噛み合わせを調整する
- 歯車の潤滑を行い、時計の正確性を保つ
歯車歯先磨き、噛み合わせ調整
時計の歯車は主に真鍮で作られており、長年の使用により摩耗していきます。
それにより噛み合いのガタつき、変形が起こり、動力の伝達ロスが発生し精度に影響が出てきます。
特に汚れたままの状態で使用を続けると、汚れ(削れた金属粉など)によりさらに状態が悪化していきます。
また、中心の軸に対し水平、垂直でなければなりません。この軸との取り付け部が緩む、歯車自体に変形がある場合には、歯車通しがぶつかる、嚙み合いがきつくなるなど、止まりの原因となります。
修理方法
- 歯ざらい
- 歯車切直し
- 歯入れ直し(入れ歯)
- 振れ取り
- 歯車カシメ直し
歯先変形修理(振れ取り)
時計を長期間使用していると、歯車の歯先が摩耗して変形することがあります。
時計修理における歯先変形修理(振れ取り)とは、時計の歯車の歯先が変形している場合に、その変形を修理して元通りにする作業のことです。
歯先変形の症状
歯先変形があると、時計が正確に時を刻まなくなります。また、動いたり止まったりを繰り返すことがあります。
歯先変形の修理方法
歯先変形の修理方法は、歯車の交換と歯先の研磨の2通りがあります。
歯車の交換は、変形した歯車を新しい歯車に交換する方法です。
歯先の研磨は、変形した歯先の表面を研磨して平滑にする方法です。
歯先変形の予防
歯先の変形を予防するには、定期的にオーバーホール(分解掃除)をおこない、油切れを防ぐことが大切です。
ヒゲゼンマイ調整(精度だけでなく、安全作用のため)
ヒゲゼンマイ調整とは
時ヒゲゼンマイは、振り子時計の振り子(重り)を吊り下げる糸に当たり、時計の精度をつかさどる非常にデリケートな部品です。
腕時計では、渦巻き状になっており、この部品の形状が崩れてしまうと、精度に大きな影響が発生します。
最近の時計は、ケースが大きく重たいため、「ちょっと落とした」くらいだとしても、ムーブメントにとっては強い衝撃であり、そのためヒゲゼンマイが変形、偏心、さらには絡んでしまうことが多々あります。
時計が「進む」原因の多くがこのヒゲゼンマイの不具合によるものです。オーバーホールの際の点検、修正が欠かせません。
ヒゲゼンマイ調整の方法
- 内端修正
- 外端修正
- オーバーコイル(巻き上げヒゲ)
部品製作
時計の部品は、摩耗や破損により交換が必要になることがあります。
部品製作とは、交換が必要な部品を新しく作る作業のことを指します。
部品を製作する際には、まず元の部品を精密に測定し、図面を起こします。
その後、図面を基に材料を選定し、加工を行います。
加工には、旋盤やフライス盤、研磨機などの機械を使用します。
部品製作に必要な道具
- 旋盤
- フライス盤
- 研磨機
- 精密測定器
- 図面
部品製作の手順
- 元の部品を精密に測定する
- 図面を起こす
- 材料を選定する
- 加工を行う
- 部品を仕上げる
部品を製作する際には、精度が大切です。
部品の精度が悪いと、時計の性能に悪影響を及ぼすことがあるため、部品製作には熟練した技術が必要です。
巻き芯交換
巻き芯とはリューズと機械を繋ぐ部品で、リューズを操作した時に折れてしまうことがあります。
また、1段引き・段引きの時に正確な位置で止まらなくなってしまう場合もあり、このような場合に交換が必要になります。
摩耗部品の修正、または部品交換
時計修理における「摩耗部品修正、または部品交換」とは、長年使用された時計の摩耗した部品を修理、または交換することで、時計を正常に動作させることを目的とした処置です。
摩耗部品の修正、または部品交換が必要な理由
時計は、長年使用していると、様々な部品が摩耗してきます。
これにより、時計の精度が低下したり、故障したりする可能性があります。
摩耗部品の修正、または部品交換の方法
時計の摩耗部品修正、部品交換においては、時計の分解・整備・組み立てなどの作業や、摩耗部品の修正や交換を適切に行う必要があるため、時計修理を専門とする技師に依頼することをおすすめします。
輪列軸の磨きなおし
ゼンマイの入った1番車から(一般的に)4番車の歯車で構成された部分を輪列といいます。
輪列軸の磨きなおしは、時計の精度を維持するために重要な作業です。輪列軸がスムーズに回転することで、時計の歯車が正確に噛み合い、正確な時を刻むことができます。
また、輪列軸の磨きなおしは、時計の寿命を延ばすためにも重要です。輪列軸が汚れや傷があると、摩擦が増えて磨耗が早まり、時計の寿命が短くなってしまいます。
輪列軸の磨きなおしの手順
研磨剤、特殊工具(ジャコツール)を使用した摩耗修正
輪列軸の磨きなおしの重要性
輪列軸の磨きなおしは、時計の精度を維持するために重要な作業です。
輪列軸がスムーズに回転することで、時計の歯車が正確に噛み合い、正確な時を刻むことができます。
また、輪列軸の磨きなおしは、時計の寿命を延ばすためにも重要です。
輪列軸に汚れや傷があると、摩擦が増えて磨耗が早まり、時計の寿命が短くなってしまいます。
ローター真交換
ローターは、時計のゼンマイを巻き上げるための部品であり、真はローターを時計に固定する役割を果たしています。
真が摩耗したり、破損したりすると、ローターが正常に回転しなくなり、時計のゼンマイが巻き上げられなくなります。
ローター真交換が必要になるケース
- ローターが正常に回転しない
- 時計のゼンマイが巻き上げられない
- 時計が止まってしまう
- 時計の精度が悪くなる
ローター真交換の作業手順
- 時計のケースを開ける
- ローターを取り外す
- 真を取り外す
- 新しい真を取り付ける
- ローターを取り付ける
- 時計のケースを閉じる