第一次世界大戦を契機に、腕時計は戦場での使用から一般的な普及へと移行しました。
オメガは、その革新的な技術と高い精度で、軍用時計の供給においても重要な役割を果たしました。
この記事では、本格的な軍用時計の誕生から、いまなお輝く30㎜キャリバーの登場まで、オメガの時計技術の進化とその影響について詳しく探ります。
2024.06.27
第一次世界大戦を契機に、腕時計は戦場での使用から一般的な普及へと移行しました。
オメガは、その革新的な技術と高い精度で、軍用時計の供給においても重要な役割を果たしました。
この記事では、本格的な軍用時計の誕生から、いまなお輝く30㎜キャリバーの登場まで、オメガの時計技術の進化とその影響について詳しく探ります。
腕時計が戦場ではじめて使用されたのはボーア戦争。本格的に普及しはじめるのは1914年にはじまる第一次世界大戦が契機と言われています。
オメガは、1917年、イギリス軍のロイヤル・フライング・コープスから、翌18年にはアメリカ陸軍からの注文が入り、軍用時計の供給をはじめます。
しかし、この頃のモデルはインデックスに夜光塗料が塗られていたものの、文字盤は衝撃に弱いエナメル(ホーロー製)で防水性もなく、むき出しのガラスで作られたもので充分な機能を備えていたとは言い難い作りとなっています。
実用性を備えたのは30年代半ば、オメガは1934年に大型のパイロット用腕時計を制作します。
ブラック・ダイヤルに夜光塗料入りのアラビア数字のインデックスにスケルトン針。ステンレス製のケースには回転ベゼルが装着され、その内部には矢型の指標が付き、経過時間などの読み取りを容易にしたモデルでした。
徐々に機能性を向上させることで信頼を得たオメガに、1939年イギリス政府から軍用腕時計の機能を飛躍的に発展させるきっかけとなったオーダーが舞い込みます。
それは1945年までに、ロイヤル・エア・フォース用にスチール製の防水時計を数千個供給するという内容でした。
画像出典元:オメガ公式
この時に誕生したのがスクリューバック・ケースの防水タイプ軍用時計。この時計の開発ノウハウが戦後「シーマスター」へと発展します。
結果的に、オメガは大戦中のイギリス空軍へ約10万個もの時計を出荷したと言われており、これまでにない大量の腕時計を提供する唯一のブランドでした。
ちなみに仕様ムーブメントはcal.30T2 SC(センターセコンド)。ケースはイギリスのデニソン社で製造されたものが使用されています。
この時計の開発と並行してオメガは画期的な開発を行います。
1939年2月に登場した30㎜キャリバーです。
このキャリバーは、腕時計としてかつてないほどの精度と可能性を持っていました。
1940年、オメガはこのキャリバーで、イギリスのキュー・テディントン天文台の精度コンクールで、100点満点中90.5点という腕時計として前代未聞の成績を収めます。
この30㎜キャリバーは、イギリス軍の腕時計にも採用され、クロノメーターではない通常の製品にも多数搭載され、各国へと輸出されました。
1939年の登場から60年代末までの長期にわたり生産され、オメガの創業から100年目にあたる1948年に登場する「シーマスター」にも搭載された事実からも、このキャリバーが優秀で、腕時計の黄金時代の到来を先導したオメガの先見性の高さを証明する存在といえるでしょう。
なお、この30㎜キャリバーの強力なライバルを開発していたのは、ロレックスやパティック・フィリップです。
オメガは40年に獲得した90.5点を46年に92.7点で自ら更新しますが、この記録を打ち破ったのはロレックスです。精度コンクールの舞台はジュネーブ天文台へ移りますが、両社はシーソー・ゲームのようにお互いの記録を更新し続けることになります。
オメガと異なり、ロレックスやパティック・フィリップは詳細なコンクールの成績を発表していませんが、パティック・フィリップについてはマーティン・フーバーとアラン・バンベリーの共著『パティック・フィリップ腕時計編』、ロレックスは『世界の腕時計No.17』(ワールドフォトプレス)に紹介されています。
いずれも古い書籍で手に入りづらいですが、興味のある方は探してみてはいかがでしょうか。
この30㎜キャリバーの優れた点は、シンプルな構造が実現させた安定性の高さに加え、メンテナンス性、耐久性にも優れている点を挙げることができます。
また、高精度版といえるクロノメーターでは、ムーブメントの外観も、華美ではない第一級の仕上げが施されています。
飾り溝が彫られ、美しく鏡面に仕上げされた歯車。丁寧に面取りされ、独特の赤金メッキが施されたブリッジとプレート。機能美と機能美に留まらない、しかし華美でないこの仕上げは、1950〜60年代の日本製の高級腕時計のムーブメントの仕上げに大きな影響を与えたと言われています。
この長きにわたり活躍した30㎜キャリバーは290万個以上も生産されたと言われています。
アンティーク時計もここ数年で価格がかなり上昇していますが、生産量が多かったことからいまでも比較的求めやすい価格帯で流通しており、アンティーク時計の入門としておすすめされることが多くなっております。
オメガがこのムーブメントを30㎜としたのは、精度コンクールに出品可能な最大サイズだからです。
当時の腕時計ムーブメントは20㎜台が主流だったので、実は30㎜は、かなり大きな機械でした。
当然、構成する各パーツもすべて大きく作ることができたので頑丈で、メンテナンス性にも優れる機械となったのです。
30㎜キャリバーは、ムーブメントの心臓部であるテンプは12㎜もあり、ヒゲゼンマイの調整もしやすく、職人がメンテナンスをきちんと行えば、いまでも精度が出せる点からも魅力的な存在です。
この魅力的な30㎜キャリバーが、その役割を終えるのは、第2次世界大戦後。
きっかけは腕時計に対して自動巻き、中3針、日付表示、薄型化など多様化する要求に応えることが、シンプルな構造では応えることができなかったことを挙げることができます。
多様化する要求に対するオメガの回答はクロノメーターの自動巻き化。これがつぎに登場する名作「コンステレーション」へと繋がっていきます。
1930年創業。年間修理実績10万本以上。 わたしたちは時計修理業界のリーディングカンパニーです。
弊社は時計修理一筋90年以上の不器用な会社ですが、これまで多数の有名百貨店や時計店とお取引をしており、ビックカメラさんやヨドバシカメラさんといった大手家電量販店の時計修理コーナーの運営も担っています。
手前味噌ではありますが、弊社の技術力は時計修理の業界内でも高い信頼を得ていると自負しております。
また、弊社、2月1日より開始いたしました新サービス『時計のライフプランナー』では、お客様のニーズにあわせた最適な修理方法をご提案いたします。
サービスの概要は
①お客様のご希望に沿った修理内容のご提案
②必要に応じオプションでのメンテナンスをご提案
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『時計のライフプランナー』では、メンテナンスにかかる金額に関しても各項目明示し、ご提案させていただきます。
『機械式時計大全』山田五郎 (講談社選書メチエ)
『THE OMEGA BOOK 時計氏に燦然と輝くスイスの最高峰ブランドーオメガ150年の軌跡ー』(徳間書店)