はじめに

他店で断られてしまう時計に、何が起きているのか。それを、五十君商店ではどう直しているのか。
五十君商店では、「特殊修理」について全9話の動画シリーズをYouTubeで公開しました。普段はお見せする機会のない修理の現場を、技術者の言葉とともに収めています。
本記事では、このシリーズで伝えたかったことと、全9話の内容を順にご紹介します。
技術の紹介ではなく、姿勢の話をしています
特殊修理という言葉は、どこか特別な響きを持っています。
けれど五十君商店にとって特殊修理とは、特別な魔法ではありません。古い時計を本気で直そうとすると、どうしても必要になる修理のことです。
このシリーズでつくりたかったのは、技術の紹介ではありませんでした。
なぜ、その修理をやるのか。
なぜ、断る前に必ず確認するのか。
なぜ、部品がなければ作るのか。
大切な時計を、どこに預けるか。その判断のための材料になればと考えています。
特殊修理シリーズ 全9話
全9話は、順を追ってご覧いただけるように構成しています。
第1話:特殊修理とは何か
「特殊修理」という言葉には、どこか特別な響きがあります。けれど五十君商店にとってそれは、古い時計を本気で直そうとすると、どうしても必要になる修理のことです。
なぜ、断られてしまう時計があるのか。なぜ、五十君商店では直せるのか。技術の話に入る前に、その理由からお話ししています。
第1話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=7EnaZzTW-_Y
第2話:天芯交換 ― 髪の毛より細い軸の修理
時計の心臓を支える軸は、わずか0.08ミリ。人の髪の毛ほどの太さです。この軸が折れると、時計は止まります。
折れた軸を抜く工程では、押すのではなく、一打で抜く。押せば変形し、周囲の部品を傷めてしまうためです。やり直しのきかない作業が、なぜ特殊修理と呼ばれるのか。その理由が見えてきます。
第2話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=8zJkfXpUOF8
第3話:テンワの片重りとポイジング ― 精度保証の世界
やらなくても、時計は動きます。けれど、傾けた瞬間に精度は崩れます。
ポイジングとは、テンワの重さの偏りを整え、どの姿勢でも正確に時を刻めるようにする調整です。この工程を省く修理店もあります。それでも五十君商店が欠かさないのは、古い時計にも精度の保証をつけてお返しするためです。
第3話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=o60uTKa9mMA
第4話:ヒゲゼンマイ修正 ― 交換しないという技術
渦巻き状の細いバネは、精度の要です。わずかな歪みで、時計の動きは大きく乱れます。
ただ、この部品は交換するものではありません。入手が難しいことに加えて、通常の使用で交換が必要になるほど壊れることは、ほとんどないためです。歪みは、修正で応えられる。その技術についてお話ししています。
第4話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=7m3HL_t_fEk
第5話:軸磨きとジャコツール ― 0.02mmの世界
油が切れた時計の中では、軸が削れ、その金属の粉がさらなる摩耗を呼びます。研磨すれば汚れは落ちます。ただ、削れやすくなった表面は、そのまま残ります。
五十君商店では、スイス由来のジャコツールを使い、磨くと同時に表面を押し潰して硬くします。0.02ミリの判断を支えているのは、測定器ではなく、光り方や傷の入り方を見極める技術者の感覚です。
第5話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=xE8oc2vxobI
第6話:香箱芯修正 ― 動力源から直すという判断
香箱は、時計で最も力がかかる場所であり、動力の源です。にもかかわらず、多少の不具合があっても動いてしまうため、最も見過ごされやすい部品でもあります。
軸穴が歪めば、軸は傾き、香箱ごと斜めになり、やがて時計は止まります。五十君商店では、一度穴を潰して小さくし、完全な円に再形成します。動くから、で済ませない部分です。
第6話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=Nsg6TF9Xkb8
第7話:メーカー修理との違い ― 判断材料をお渡しします
メーカーで修理しないと、資産価値が下がるのではないか。よくいただくご質問です。
時計の中身の部品は、100分の1ミリ以下の精度で作られています。合わなければ、そもそも動きません。つまり、価値を左右するのは、どこで直したかではなく、どう直したかです。選択肢がある場合は必ずご説明し、ご了承をいただいてから作業に入ります。
第7話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=WQOkOSzD2dQ
第8話:メーカー修理不可の正体と「作る修理」
メーカーで修理不可と言われた時計の多くは、本当に直せないわけではありません。この年代以前は受けない、という方針で線が引かれているケースが少なくないためです。
五十君商店では、まず見ます。そのうえで、部品を仕入れる、あるいは一から作る。歯車ひとつでも、計算すれば大きさも厚みも導き出せます。使わなかった部品を捨てずに残してきたことも、その支えになっています。
第8話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=jBNKIXVP4Zk
第9話:五十君商店の修理哲学 ― この時計を誰に託すか
変えなくていいものは、変えない。使えるものは、使う。
メーカーではムーブメントを丸ごと交換するオーバーホールも増えていますが、五十君商店で中身を入れ替えることは、基本的にありません。お客様の時計は、お客様の時計のまま。思い出ごと直してお返しするのが、五十君商店の流儀です。
3年から5年に一度のメンテナンスが、結果として費用を抑え、時計を長く使うことにつながります。
第9話はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=xRGlaW6QfsU
修理のご相談について:宅配修理・来店予約のご案内
五十君商店では、動画でご紹介した特殊修理にも対応しています。20年以上前の旧型モデルや、メーカー対応が終了した時計についても、自社工房内での部品加工や調整によって対応可能な場合があります。
全国対応の宅配修理サービス
全国からご利用いただける宅配修理サービスをご用意しています。
専用の梱包キットを無料でお届けし、往復送料もかかりません。
宅配修理の詳細はこちら
https://www.igimi.co.jp/packing-kit/
店舗でのご相談・来店予約について
お近くに店舗がある場合は、直接お持ち込みいただいてのご相談も可能です。
来店予約はこちら
https://www.igimi.co.jp/reserve/
まとめ
五十君商店にとって特殊修理とは、特別な魔法ではなく、古い時計を本気で直そうとすると、どうしても必要になる修理のことです。全9話のシリーズでは、天芯交換やポイジング、ヒゲゼンマイ修正などの現場を通して、なぜその修理をやるのかという姿勢をお伝えしています。
シリーズを通してお伝えしているのは、壊れてから直すよりも、壊れる前に見ることのほうが、結果として時計を長く使えるということです。大切な時計をどこに預けるか、その判断の材料としてご覧いただければ幸いです。