2018.12.18
機械式時計の精度と、時刻が合わなくなる原因や修理・オーバーホールについて
そこで今回は、機械式時計の精度と、時刻が合わなくなる原因や対処法について詳しくご紹介します。
機械式時計とクォーツ時計の違い。仕組みや精度について
機械式時計とクォーツ時計は内部の仕組みが違うので精度に違いがでる
機械式時計は、クォーツ時計とは違い、仕組みや精度が大きく異なります。電池と電子回路で動かすクォーツ時計に対して、ゼンマイが解ける力を動力とするのが機械式時計です。物理的な動力を使用しているため、どうしても1日に数秒の誤差が生じてしまいます。
機械式時計には、手巻き時計と自動巻き時計がありますが、いずれもクォーツ時計と比べると多少の誤差がでます。
精度の許容範囲は最大1日30秒、誤差は平均値で確認すること
機械式時計の精度は、どのくらいでしょうか?新しいものでも1日に数秒~30秒程度の誤差を許容範囲としています。
時計の精度は、使い方の環境(温度や湿度、ゼンマイの巻き具合、携帯時間など)により変化します。
正しい精度を測るには、1日の誤差だけで判断せずに、少なくとも1週間程使用した平均値で確認するとよいでしょう。ゼンマイのほどけ具合よっても誤差は変わります。計測を行うときは、巻き具合も一定になるように(リューズを巻き止まりまで巻くなど)調整することが望ましいです。
機械式時計が遅れ・進みの原因と対処法について紹介
原因その1 油切れ・油の変質トラブル
機械式時計は、クォーツに比べると手間がかかり、精度は落ちますが、とても人気があります。
しかし1日30秒以上誤差がある場合は、内部でトラブルを起こしている可能性があるため、ここでは時刻のずれる原因について5つご紹介しましょう。
まずは、「油切れ・油の変質のトラブル」についてです。機械式時計は、100を超える多くの部品が組み合わされて作られています。その一つ一つの部品に、スムーズな動作と摩耗を防ぐために専用の油(潤滑油)が塗布されています。
しかし、使い続けていくうちに、内部の潤滑油に乾燥や凝固、変質などが起こり、部品の動きを妨げて、精度に影響を及ぼします。正しく使用していても、3~5年ほどで潤滑油の乾燥は起こります。
油切れや油の変質は、変質や凝固した潤滑油の洗浄と補充を行うことにより、正常な状態に戻ります。
原因その2 自動巻き上げ機構のトラブル
自動巻き時計は、時計を着けた腕の動きに合わせて半円状のおもり(ローター)が回転し、歯車などに伝達して、ゼンマイを巻き上げます。この自動で巻き上げる機構部分は負荷がかかりやすく、部品同士がこすれて歯車などの部品を摩耗させてしまいます。
摩耗してしまった部品や部品カスは、分解掃除と部品交換を行うことで正常な状態に戻ります。
原因その3 ヒゲゼンマイのトラブル
落下など時計に強い衝撃を受けると、テンプに取り付けられたヒゲゼンマイにトラブルが起こることもあります。
機械式時計は、ヒゲゼンマイが同じ周期で回転運動を行うことで、アンクル、がんぎ車といった部品に動力を伝え、調整を行い、針を動かします。強い衝撃により、ヒゲゼンマイの中心(天真)が歪んだり、ヒゲゼンマイが絡んだりすることによって、動力が正しく伝わらず、遅れや進みの原因になることがあります。
この場合、ヒゲゼンマイの調整や問題となる部品の交換などが必要となります。
原因その4 緩急針のずれ
強い衝撃は、時計の精度を微調整する緩急針をずらしてしまうこともあります。
緩急針とは、ヒゲゼンマイの長さを変えテンプの振動を調整し、時計の精度を微調整します。
ヒゲゼンマイに直接触れている部分のため、精度が落ちた緩急針は、専門家による調整が必要です。
原因その5 磁気帯びによるトラブル
機械式時計は強い磁気を受けると、精度に影響を残します。一度磁気の影響を受けてしまうと、いくら磁気から遠ざけたとしても、ムーブメント内部に磁気が残り、精度に影響を及ぼし続けます。
この場合、専用の機器を使った脱磁を行うことで、元の精度に戻ります。
磁気の強さは距離が離れるほど影響が小さくなります。5cm離すだけでも大きく変わるので、時計を腕から外したときは、少しでも磁気を発する電化製品から離して置くように心掛けましょう。
機械式時計がずれる原因について簡単に説明させていただきましたが、いかがでしたか。これらはちょっとした注意と定期的に時計のメンテナンスを行うことで、トラブルを回避することができます。故障を起こし、修理で大きな費用や時間が発生する前に、定期的なオーバーホールでメンテナンスを行うことをおすすめします。
>弊社(五十君商店)のオーバーホールについて詳しく知りたい方はコチラ
機械式時計が止まる原因と対処法について紹介
原因その1 油切れや変質によるトラブル
では、すでに動かなくなってしまった機械式時計はどうすればよいでしょう。外側からはわかりませんが、内部で大きなトラブルを起こしてしまっている可能性があります。ここでは主に止まってしまった4つの原因についてご紹介しましょう。
まず、「油切れ・油の変質のトラブル」についてです。
機械式時計を長期間使用していないと、潤滑油の乾燥、凝固が起こり、部品が動かなかったり、錆による腐食していたりする可能性があります。この状態で無理に時計を動かすと、部品の摩耗や破損などが起こり、取り返しのつかない状態になりかねません。
部品の腐食や破損は、分解掃除と不良部品の交換、油の塗布が必要です。
久しぶりに動かす機械式時計は、オーバーホールなどメンテナンスを行ったうえで、使用を再開することをおすすめします。しばらく使わない時計を保管する場合は、月に1度でも駆動させるとトラブルが起こしにくくなります。
また、五十君商店では時計の種類ごとに適した収納ボックスを多数扱っています。
腕時計の正しい保管・収納方法やおすすめグッズのご紹介は下記のコラムをご参照ください。
>腕時計の保管・収納方法は?おすすめのワインディングマシーンや収納ケースなどをご紹介
>ワインディングマシーン人気のおすすめ17選を、実績ある時計修理のプロが紹介
>おすすめの腕時計ケース・コレクションボックスをおしゃれ・持ち運び可能・大容量など種類別に紹介
原因その2 歯車の摩擦によるトラブル
また、常に使っている時計でも、潤滑油の乾燥や凝固を放置したままで使用していると、部品(歯車)の摩擦により、摩耗や破損などが起こります。無理に動かすことにより、破損した部品のかけらが他の部品を傷つけるなど、被害が広がることもあります。
部品の傷や破損は、分解掃除と不良部品の交換、油の塗布が必要です。
原因その3 ゼンマイ切れによるトラブル
ゼンマイの巻きすぎや、潤滑油が切れていると、ゼンマイが切れることがあります。切れたゼンマイは部品交換が必要です。
ゼンマイは巻き上げ不足だと精度が不安定になるため、多めに巻きがちですが、巻き上げすぎると過剰に力がかかり金属疲労でゼンマイが切れてしまいます。
適切な巻き上げは、手巻き時計は巻き止まりまで。自動巻き時計は、運動量が少ない方に限りますが、手でリューズを30回ほど巻き上げる程度でよいでしょう。ただし、手で巻けない種類もあるのでご注意ください。
原因その4 水・ゴミの浸入によるトラブル
防水性を維持するため、時計の裏蓋などに使用されているパッキンは、正しい使い方をしていても日々劣化しています。劣化したパッキンのままで使用していると、時計内部に水分や湿気が侵入して錆や腐食、変色の原因となります。また気密性が損なわれたままで使用を続けていると、ゴミやホコリが侵入し、部品の傷つけ、破損する可能性があります。
水分やゴミの浸入した場合は、劣化したパッキン、不良部品の交換と分解掃除、油の塗布を行い、防水性と気密性を維持できているか検査が必要です。
防水性を少しでも長く維持するためには、時計の使用方法や定期的な防水検査、パッキンの交換などが必要です。時計内部の浸水についてもっと詳しく知りたい方は、以下をご参照ください。
機械式時計が動かなくなった原因について、簡単に説明させていただきましたが、いかがだったでしょう。時計が動かなくなったときは、無理に動かしてはいけません。水分の浸入やパッキンの劣化が疑わしいときは、放置しないようにしましょう。知らぬ間に被害が大きくなっている可能性があります。不調を感じたら早めにオーバーホールによる点検や修理を行うことが大切です。
>オーバーホールの手順について詳しく知りたい方はコチラ
>時計の修理内容や料金について詳しく知りたい方はコチラ
腕時計の精度に不安を感じたら、オーバーホールで点検をしよう
普段から身に着けている時計はちょっとしたが原因で、調子が悪くなることがあります。
「時計の精度は許容範囲内か」「前回のオーバーホールからどのくらい経っているか」などを確認し、不安を感じたら、早めにオーバーホールで点検を行ってください。
人間と同じように、定期的なオーバーホールで不調な場所がないか点検し、不調がでたら早めに修理を行いましょう。放置は悪化の原因になります。
機械式時計は手間がかかります。しかし、愛情を持ってメンテナンスを行っていくと、クォーツ時計よりもずっと長く一緒に過ごすことができるでしょう。
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